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 インド破産倒産委員会Insolvency and Bankruptcy Board in India:IBBIとは、規則の制定や倒産専門家Insolvency Professional:IPの登録など、破産倒産手続を主管する団体として、昨年12月に施行されたインド破産倒産法に基づいて設立された機関です(同法188条)。

 インドの破産法は、日本の破産法と比べて債権者からの申立が行いやすいこと(というか債権者主導が想定されている)、日本の破産法と異なり手続開始後は直ちに清算するのではなくて再建計画(resolution plan)が債権者集会で承認されることが志向されること、のみならず、再建計画は「誰でも」提案できるとされていることから、日本企業からも、債権者として、のみならず、事業取得の一機会としても、近時、注目度が高まっています。
(現に、私も日本企業からの依頼で、インド破産法に関するセミナーを、年明けにさせていただく予定があります。)


 施行からちょうど1年、条文解釈に関する裁判所の判断、新たな規則の制定、そして有名大企業への申立(日本企業を含め)、が相次いでおり、新聞報道でも連日その名を見ることの多い破産法について、再建計画の実際など、より実務的なことを知るべく調査をしているのですが、そんな折に、IBBIがワークショップを実施することを、そのホームページで知りました。
 もちろん、試験に合格して資格を得ている倒産専門家(IP)が対象で、知識を前提に実務を学び、日常業務での疑問の解消を目的とする類のものです。
http://www.ibbi.gov.in/workshop.html

 当然、私に受講資格はないものの、これはどうしても参加してみたいと思いました。
 そこで、まずメールで参加の依頼をしていたものの、返事がありませんでしたが(経験上予想どおり)、次に今日会場に行って直接主催者にお願いしたら、最初はちょっと嫌な顔をされましたが(これも経験上予想どおり)、本当に、どうしても受講したい旨を、一生懸命お願いしたところ、レジュメ(履歴書)を直ちにメール送付することを条件に、あっさり、和かに了解してくれました。
 最後は思っていたよりスムースに参加できることになり、前回のクレーム対応に続いて、インドでは直接対峙時に気合を入れることの重要性を、益々実感したところでもあります。


 さて、1日目、午前9時から午後6時まで(時間が押して午後6時半まで)、いやー、めちゃくちゃきつかったです。

 まだまだ、英語の法律談義(早口)を聞き流して理解できるほどではないので、集中力の消耗がものすごく、正直、午後のランチ後のコマでは、ところどころ寝落ちしてしまいました。。そういえばちょうど2年前、1週間だけ行ったセブ島英語留学(1日9時間集中レッスンコース)に比べてもずっと大変でした‥。

(ちなみにカリキュラムは以下のリンク先のとおりです。私の経験に照らすとインドでは珍しく、予定された講師が全員、ちゃんと来ていました。)
http://www.ibbi.gov.in/Proposed_Workshop_Structure_wip3_1.pdf

 
 このように、内容も超盛りだくさんで、ブログにまとめられるものではなく、また明日も朝9時からで、今日は力尽きた感がすごくてもう寝ようと思いますが笑、以下、今時点で印象に残っていることだけ、ざざっと書き残しておこうと思います。


■ディスカッションスキルのレベルの平均値が、インド人の方が日本人より高いのでは?(と思った)

 今日のイベントは「ワークショップ」ということで、通常のセミナーとは違い、上記リンクのカリキュラムのとおり各セッション毎にスピーカーがいるものの、その話の途中でも、参加者は自由に発言していい、というスタイルで実施されていました。
 私としてはもっとスピーカーの話を一貫して聞きたいなあと思う時もあったものの、参加している個々の専門家にとっては、日々感じている自分の疑問についてはこの期を逃さず解消させようと、関係する話題になればすかさずスピーカーに質問ができるということで、最後に限られた質疑応答時間しかないよりも、総合的に得るものが多かっただろうな、とも思いました。

 それで、皆さん即時に質問をされるわけですが、総じて、簡単に言うと質問の仕方が上手い、具体的には、堂々とわかりやすくまとめて話すことができる方が多い(方ばかり)、のように感じました。

 日本でこの手のイベントやセミナーに参加した私の経験からして、というだけの話ではありますが、そもそも質疑の活発さ(遠慮のなさ)自体が全然違いますし、これらは、やはり場慣れの話としての教育の問題、そして、はなから調和を志向するよりは自己主張してそれが当たり前(要は自分を低くみない?)という、文化的なアティテュードの問題(結局は教育の問題?)なのかな‥、などと、今、疲れた頭でぼんやり思ったりしています。日本人やばいぞ、というレベルの体感でした。


■ペルソナを作れ、それが一番大事だ(という教え)

 上記カリキュラムのとおり、12時15分から「倒産専門家の役割と職業倫理」というタイトルのセッションが、弁護士をスピーカーに迎えて行われました。
 日本では、破産手続を進める破産管財人は弁護士から選任されますが、インドで破産処理手続を担うのが倒産専門家で、この資格を取得しているのは、弁護士よりは会計士や会社秘書役の有資格者が多いようです。
 このセッションでは、おそらく、旧法下での倒産手続への関与経験が豊富な弁護士が、債権者をはじめとする利害関係者をどうハンドリングしていくか、うまく進めていくための心構えやコツのようなものを講義していたようです。

 そして、そこで印象に残っているのが、(弁護士の講義なのに、)とにかく、コミュニケーションすることを心がけよ、コミュニケーションスキルを磨け、というセリフが繰り返されていたことです。
 そして、「build persona」という言葉も、何度も強調されていました。これはどういう意味でしょうか。人格を磨け、とでも理解できますでしょうか。

 結局、インド破産倒産法で債務者の再建計画を通すということは、いくばくかは(或いは大部分の)債権カットを甘んじる結果を債権者の大多数に了解してもらう、ということなので、最後は主宰者の信頼がものを言うんだ、ということだったのかなと、(ちょっとわからないところもあったので)想像したりしています。
 ともあれ、前のセッションと打って変わり、ペルソナを作れ、という弁護士の教えを、参加者一同が背筋を伸ばして聞いている状況は、とても印象に残るものでした。

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 以上、その他としては、ランチ時にはみんな気さくに話かけてくれて(私も話しかけましたが)、すぐお前はもう友達だと言ってきたり、私はそういうやり取りも好きなので楽しかったのと、あとはその時に「日本の破産法とインドのとはどういう違いがあるのか」と聞かれて、わ、しまったと、英語で答えるのは実は結構苦労したと、そういうことが思い返されます。

 ちなみにこの点、違いとして債権者主導、再建計画ありき、ということのほかには、開始要件としての支払不能の概念が異なる、すなわち、日本では債権者が債務者の破産手続開始を申し立てようとしたら、自分に対して支払いがないことだけではなく、全ての債権者に対してもはや支払える状況にない、ということを主張立証しなければならないのですが、インドではそこまで必要とされず、自分に支払いがないことに関する立証が求められているだけ、ということが挙げられると思っています。

 何回か聞かれて、なんと英語で答えたのか、もう覚えておらず、またちゃんと調べなければとも思っていましたが、そろそろ限界なので笑、今日の投稿は、以上です。
 快く参加させていただいた主催者の方々には、本当に感謝の気持ちで一杯です(ランチも食べさせていただいて‥。)。
 今後もいい関係を続けて、こちらにも何かお返しすることができれば、と思っています。

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